【 五行説のバランスが崩れるとき①(五行相乗) 】の中で述べたように、相剋関係の異常には「相乗(ソウジョウ)」と「相侮(ソウブ)」関係がある。
「相乗は、相剋の過剰つまり相手を抑え込む力が強すぎる状態をいい、相侮は相乗とは逆方向に抑制が起きる状態をいう」と解説したが、相乗の逆方向に抑制が起こるとはどういうことなのか。
この回では、五行の「相侮関係」について触れていく。
五行相侮(ソウブ)説
相侮とは相剋の反対関係で、反剋とも言う。本来とは逆方向に抑制が加えられる状態である。相剋の矢印の逆方向に力が働く現象だ。
本来、相剋していた一行が、それを制約できなくなるだけでなく反ってそれによって剋制されることを指す。
相侮には相乗と同様に2つのパターンがある。
A五行のなかのどれか一行(剋される側)が正常の限度を超えて強くなり過ぎ、相剋関係が逆転してしまう場合と、
B五行のどれか一行(剋する側)が正常の限度を超えて弱くなり過ぎ、正常な相剋が行えずに相剋関係が逆転してしまう場合がある。
《Aの関係》
Aの関係の「木侮金」を例にとると、下記図のように、木が強くなりすぎて、金行の相剋の力を超えて「金剋木」 の相剋関係が逆転し、木行が金行を剋する力が発生することを指す。
※図は「木侮金」の例
土侮木
土が強くなりすぎ、木の相剋を受けず、木剋土の相剋関係が逆転すること。
土に栄養がありすぎると、木が肥料に負けてしまう。
木侮金
木が強くなりすぎ、金の相剋を受けず、金剋木の相剋関係が逆転すること。
木が固すぎて金属の刃物で切れない。または逆に傷つけてしまう。
金侮火
金が強くなりすぎ、火の相剋を受けず、火剋金の相剋関係が逆転すること。
金属が多すぎると溶かすには時間がかかり、火を消耗してしまう。
火侮水
火が強くなりすぎ、水の相剋を受けず、水剋火の相剋関係が逆転すること。
火の勢いが強すぎて水の量で抑えられない。又、水分が蒸発して少なくなる。
水侮土
水が強くなりすぎ、土の相剋を受けず、土剋水の相剋関係が逆転すること。
水が多すぎると、土砂が流されてしまう。
《Bの関係》
Bの関係の「木虚土侮」を例にとると、下記図のように、木が弱まりすぎて、正常な相剋が行えず、「木剋土」の相克関係が逆転し、土行が木行を剋する力が発生することを指す。
※図は「木虚土侮」の例
火虚金侮
火自身が弱いため、相対的に金が強くなり、火剋金の相剋関係が逆転すること。
水虚火侮
水自身が弱いため、相対的に火が強くなり、水剋火の相剋関係が逆転すること。
土虚水侮
土自身が弱いため、相対的に水が強くなり、土剋水の相剋関係が逆転すること。
木虚土侮
木自身が弱いため、相対的に土が強くなり、木剋土の相剋関係が逆転すること。
金虚木侮
金自身が弱いため、相対的に木が強くなり、金剋木の相剋関係が逆転すること。